歐州連合(EU)はこのほど、ギリシャ債務危機の拡大を防ぐため、國際通貨基金(IMF)との合同による総額7500億ユーロの緊急支援制度の創設を打ち出した。債務危機に陥るおそれのあるすべてのユーロ圏國を支援し、「すべてをいとわずに」ユーロの安定を維持する考えだ。
債務危機の発生はEU內外に大きな影響を與えた。ポーランドはギリシャ債務危機にかんがみ、ユーロ導入を急がない方針だ。
EU統合のプロセスは「拡大」と「深化」の両翼からなる。拡大の中で深化し、深化の中で拡大する。このことから拡大EUと中核EUの區別が長年存在してきた。中核EUとはまず、歐州統合の「エンジン」と稱されるドイツとフランス、次にいくつかの「古いEU」國、特にユーロ圏國を指す。これらの國々は歐州統合プロセスを推進し続ける中核的パワーだ。中核EUの外にはユーロ未導入の中東歐諸國などがある。債務危機による內外條件の変化によって、こうした國々はユーロ導入を延期せざるを得なくなった。
深化の面では、EUは元々、「EU憲法」の簡略版とされる「リスボン條約」の発効後、EU統合のプロセスがさらに深いレベルでの政治的統合、外交?防衛統合、社會統合へ突き進むと考えていた。だが債務危機の発生によって前進の歩みが一時停滯し、歐州経済通貨同盟の構造的欠陥についての再考を迫られている。たとえば、統一の通貨政策と統一されていないマクロ経済?財政政策との間の調整の難しさがある。では、EUとIMFによる緊急支援制度は永久的な制度として、將來の歐州債務危機の原因を除去できるのだろうか。答えは否だ。この制度は応急処置に過ぎず、抜本的治療ではないからだ。このため、どのようにして各國のマクロ経済と財政政策の協調を強化するか、各國の赤字?債務情況を監督し、厳しい処罰を実施するかが、特に重要と思われる。
EUの各メディアが指摘するように、債務危機はEUに「マーストリヒト條約」の改正、「安定?成長協定」の一部條項の再検討を迫っている。各國の債務発行や財政予算の改革、さらには各國の経済主権の再調整も必要だ。債務危機はEUに改革の加速?強化を促している。危機の洗禮を受けるたびに、EUは前進への曲がりくねった道の上で、時に後退を余儀なくされてきた。だが後退は失敗ではなく、より力強く前進するためのものなのだ。歐州統合のプロセスは、曲折の中で前進するという軌跡を常にたどってきたのである。
「人民網日本語版」2010年5月14日