広島で開かれたG7サミット(主要7カ國首脳會議、5月19~21日)の前後から、日中経済分野での日本の新たな政策や、日本が他國と連攜して中國との半導體分野の取引を規制する動きが頻発している。中日の外交レベルでの意見の相違が徐々に経済分野に及び、近い將來、半導體だけでなく、電池や人工知能(AI)など多くのハイテク産業で日本の対中経済規制が増え続けることが予想される。これに関係する原因は、他國(米國)からの要求であり、日本の「経済安全保障」政策から出たものでもある。
1972年の中日國交正常化後に見られた両國経済の交流の勢いに、新たな変化が生じようとしているようだ。中國が日本の技術と資金を導入することにより経済を発展させ、中國経済が発展した後に日本はその見返りを得る――この相互の経済?貿易関係はさまざまな影響を受けている。米國の中國デカップリング(切り離し)と日本の(中國に対する)経済安全保障によって中國経済は停滯するのか、デカップリングと経済安全保障によって日米経済は將來、中國の経済発展を上回る 勢いが出てくるのか。これらは非常に関心を集めるテーマとなっている。
変化し始めた中日相互補完
中日國交正常化時(1972年)の両國の経済格差は言うに及ばず、2000年頃でも中日の経済規模や1人當たりの富の創出能力には大きな差があった。
個人的に強く印象に殘っているのは、21世紀になって日本の経済分野の役人を取材したとき、彼らが中國の地方の狀況を大変良く知っていたことだ。詳しく聞くと、日本のODA(政府開発援助)のプロジェクトを擔當する役人で、當時は多くのプロジェクトが中國の地方で展開されていた。その援助は無償ではなかったが、中國は資金不足で、さらに経済を成長させるさまざまな技術や社會インフラが不足していた頃で、日本の対中ODAは大きな役割を果たした。日本企業を取材していても、技術の発展レベルでほぼ全面的に中國企業を上回る狀況を維持していることが見て取れた。
それから10年の時を経た2010年頃、日本の経済官僚と交流すると、多くの人が、中日が経済規模で肩を並べて大差がない狀況はかなり長く続くだろうと考えていた。一方、日本企業は多少なりとも中國との競爭を感じていたようだ。しかし、中國経済が日本を何倍も上回るなどということは、討論はされたが、基本的には2050年かそれよりもっと後に現れる予測として考えられていた。
だが筆者は、この討論が基本的に日本経済も発展するという前提に基づいていることに大いに違和感を覚えていた。11年に東日本大震災が起き、東京電力福島原発が事故を起こすなどとは誰もが思いもしていなかったし、安倍第2次內閣ができるとも考えていなかった。8年にわたる安倍內閣により、日本の名目國內総生産(GDP)は12年の6兆?から5兆?まで収縮した。経済規模において、中國は拡大して日本は収縮し、日本経済の収縮は予想を上回る速さだった。
40年前の改革開放初期にあった中日の経済格差は一変し、急速な発展と喪失のコントラストはますます鮮明になっている。日本は対中経済関係の再調整が必要で、経済安全保障を追求し始めた。
中日経済の優位性による相互補完とは、換言すれば、日本の技術と資金が中國市場の形成と成長、急速な発展を手助けし、巨大な中國市場が日本経済の失われた20~30年に、人々の経済?生活面で大きな悪化が起きないよう支えたということだ。だが、新たな中日の経済関係を構築する過程において、優位性による相互補完の長所は次第に弱まってきている。半導體において中國の発展を制限し、そのほかのハイテク分野で中國とデカップリングを行うことは、今後の日本の政策選択で重要な內容となるはずだ。
ハイテクなどでの中日競爭
日本の対中経済政策が、今日ほど中國との取引を厳しく制限したことはない。今月23日に正式に施行される先端半導體製造裝置などの中國への輸出規制は、中日の経済関係を優位性による相互補完から競爭へと向かわせるもので、特にハイテク分野での激しい競爭の始まりを告げるものだ。
中國が半導體分野で日本を追い掛けるのは、確かに非常に難しい。だが第2次世界大戦後、中國が日米などによる経済制裁を経験したのは、何も初めてのことではない。1950年代と違い、現在の中國は世界で最も多くのエンジニアと研究開発者を抱えている。もっと違うのは、市場経済が巨大な役割を発揮しており、周辺諸國と極めて緊密な貿易関係を持っていることだ。
この數十年、中國市場は徐々に強化され、參入企業は大膽に投資し生産を拡大すると同時に、技術の導入?開発を望んできた。中國の生産は國際社會と有機的につながっており、より柔軟な生産方式で市場のニーズに対応できる。デカップリングや経済安全保障體制の下、このような有機的なつながりが分斷され始めると、中國國內の産業チェーンが強化されることになる。中日は半導體や電池、5G(第5世代移動通信システム)、AIなどの分野で産業チェーンを構築しており、両國の産業チェーン間には競爭関係が形成され、地域間の新たな競爭が生じている。
中國企業が優位な電池分野
日本の企業は電池の分野で非常に多くの特許と生産技術を有しているが、電池の製造工場が不十分だ。パナソニックやトヨタが電池産業に投資しているが、中國企業の投資規模や研究開発のスピード、市場の利活用ぶりと比べると、その差はかなりある。筆者は、米ニューヨークタイムズ紙5月16日付の記事、「中國と何らかの形で協力しなければ、直接的であれ間接的であれ、電気自動車の分野で成功を収めることは不可能だ」に注目した。
中國の電気自動車市場の規模と輸出規模は、いずれも日本企業の比ではない。電気自動車の中國での普及は、電池(バッテリー)が中國で発展した結果だが、逆に電気自動車の中國での発展も促した。電池もそうだが、他の産業もまたしかりだ。
デカップリングや経済安全保障による影響を回避し、新たな自力更生の道を歩もうと、いま中國企業は努力している。
山東省青州市の経済開発區にあるロボットアーム製造工場(vcg)
「人民中國インターネット版」