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ヘルスロードで中國と日本を繋ぐ田邊潤さん |
発信時間: 2009-12-31 | チャイナネット |
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元?陸上?走り高跳びの選手。生涯スポーツ(健康運動)の研究家。現在は早稲田大學本莊高等學院教諭。2008年4月~2009年3月、早稲田大學研究員として北京大學に滯在。この間、大學のキャンパスや北京の公園で展開されている色とりどりの健康法に魅了され、公園に通って「修行」する日々を送っていた。 その北京での研究成果の総まとめに、『中國オモシロ健康法』が出版された(中國外文出版社)。 現代中國社會を中高年スポーツという視點から細やかに観察しており、寫真、動畫をもふんだんに取り入れている。読みものとしてだけでなく、面白健康法のマニュアルとして(実演DVD付き)、または北京の公園観光のガイドとしても利用できる一冊だ。 帰國後、中國でヒントを得た健康法の數々を自らの授業だけでなく、日本各地での中高年向け講座や、小中高校の生徒への指導と普及に精力的に取り組んでいる。 中國の公園や面白健康法にかくも魅了した理由は何か。さらに、中國が源流のこれらの健康運動にどのような夢を託しているのだろうか。 中國の公園に魅せられて ――中國との出會いは? 私の家では、以前から中國をはじめ世界各國からの學生たちをホームステイで受け入れ、楽しく交流してきましたが、実際に中國に來たのは1990年の北京訪問でした。天壇公園と景山公園を見學した時、皆さんが外でダンスをしていたのを見て驚き、中國の人々の明るさが印象に殘りました。その時から、中國の健康文化にほかの國にないものを感じ、いつか中國に行って、中高年の健康運動を研究したいなと思っていました。 ――研究員として北京に滯在していた時、毎日のように公園に通っていたようですね。 そうでしたね。特に北京五輪が終了してからの後半では様々な公園を回りました。中國の公園をテーマに選んだのは、公園で觸れ合った人々の溫かい人柄に魅せられたからです。それは學校や町での觸れ合いとは違う、別の世界のものでした。 ご存じのように、日本と中國の間には、歴史問題はもちろん、政治、経済、社會的なつながりなど複雑な問題が色々あります。けれども、公園に集まっている人々はそういった問題とは関係なく、お互いの健康という、生きてゆく上で一番の基本となるテーマで話し合えます。健康長壽は経済も社會も歴史も関係なく、そういう中で、お互いを高め合えるような情報交換が、公園での一般市民との交流でできるということを実感しました。
――北京の公園を日本やその他の國の公園と比較すれば? 日本には広い公園があまりありません。公園というと、幼稚園に入る子どもとお母さんが行くイメージがあります。ところが、公園は中國ではむしろ定年退職した方たちが集まりに來る場所で、中高年の方々の最高のテーマーパークだと思います。年齢も40、50歳から80、90歳へと幅が広いし、中には歌が得意な人、ダンスが上手な人、個性的な人が多いです。 歐米の公園に行けば、ジョギングしている人が通り過ぎる中ゆったりと時間を過ごす人々がいて、日本と似ていると思いますが、中國のように活発に表でダンスをする人はそんなにはいないと思います。メキシコやスペインでは踴りのパレードは見られますが、お祭りの日とかが多いですね。 日本にも高知のよさこい祭りや、徳島の阿波踴りなどがあり、いわゆる「晴れの日」にダンスや踴りをするというのが色々ありますが、それが北京の公園では毎日がお祭りです。 そういうものが年間を通してやっているというのが、北京の面白さ、中國の公園の面白さですね。
面白健康法で深まる中國理解 ――公園での付き合いから受けた中國人のイメージとは? 日本の人と比べて、性格の違いを感じるということでしょうか。日本人は人がどう見ているかをすごく気にしていますが、それに比べれば、中國人は人のことを気にしないというか、體裁よりも実をとるように感じました。 ――健康體操の研究を通して見えた中國とは? 多分、世界の中でも、中國ほど多くの健康法を生み出し、また実踐している國はないと思います。世界的に知られる太極拳や気功も、驚くほどバラエティーに富んだ種類がありますし、私が興味を持ったユニークな體操、たとえば、笑いの體操だとか、棒を使った「打花棍」とか、中國ゴマ(空竹)とか、リボンを振り回す體操とか、手のツボを叩く體操とか、中國の人たちは歴史的に見ても様々な面白い體操を考え出し続けています。 しかも、皆さんそれぞれのこだわりがあり、それについて尋ねれば、ちゃんと自分なりに理由を話してくれています。 たとえば、お笑い體操を発案した先生は、人體には「小笑いの門」と「中笑い、大笑いの門」があり、それを開くことが日々の健康に役立つと唱えています。 または、クルミを手でまわしながらツボを刺激するという古くからの健康運動がありますが、クルミを持っている人に「何で持っているのか」と聞くと、「指のツボを刺激して、左右の脳を使うんだ」とか、ちゃんと皆さんから一言一言、答えが返ってくるのです。そして、その胡桃の一つにだってこだわっているのです。買おうとすると、「とげのあるもの、觸ってみるとちくちくするのが良いよ」とか教えてくれました。 日本から中國を見ると、ややもすれば、「中國は模造品やコピーが多い國だ」という印象がありますが、実際に私が接した中國の方たちというのは非常に個性的だし、人とは異なった自分なりの健康法を追求する人が多いように思います。 ――面白健康法の研究は中國と中國人への理解を深めたことにもなったようですね。それが今度本という形になって出版されると、きっと多くの日本人の中國理解にもつながることと言えますね。 実は、私にとって日中友好に役立つことを考えるなどということは遠い存在でした。自分が何かにかかわれるようなものではなかったと思っていました。ところが、まさに、北京で數多くの方々と知り合って、面白健康法に觸れたことがきっかけになり、「自分の分野だったら」、「こんなことだったらできるんじゃないか」と思い直すようになりました。 中國と日本の間には、様々な立場の方々が色々な形で友好交流に盡力しています。自分は政治も経済にも積極的にかかわりはできませんが、健康法を伝えることでひょっとしたら日本人にも受け入れられ、中國の人たちにも役立つことができるかもしれないと思えるようになりました。 北京に一年間住み、出會った中國の人たちにたいへん良くしていただいたので、その方たちへ感謝を返す意味で、自分なりに何ができるのかを考えました。感謝の気持ちを形のあるものにして、それを表現すること自體が友好につながるのではと思い、多くの人にも役立つようにと考えた企畫が、オモシロ健康法という形になったような気がしています。
中國の公園は面白健康法の「メジャーリーグ」 ――ところで、田邊さんは北京に來た當初、別のアプローチで研究を進めようと考えていたようですね。 私は、日本で「バランススティック」という小さな平均臺を発明しました。長さ68センチ、高さ2センチ、幅4センチ~10センチほどの板の上で、様々な體操をしてバランスを取るというものです。 當初は、それを中國に伝えて、バランスティックを使っての體操の動き作りを、中國の人と一緒に開発すればよいなという夢を抱いてやってきました。 ――それが、後に方向を転換したということですか。 そうですね。中國の公園で、一般の方々の健康運動に対する情熱に觸れ、健康でありたいという気持ちが長い歴史の中から営々と育まれているものなのだと知った時、私が當初から思っていた以上の、本當にレベルの高い健康法が考え続けられているのだということを感じました。そこで、バランススティックを中國の人々に受け入れられようなものにするには、私の方がまだ勉強不足だと思って、それよりも、もっと中國を學ばなければならない、逆に中國でやっている健康法を自分で取り入れなくちゃと思うようになりました。そんなわけで、バランススティックは日本に持ち帰って出直そうと思っています(笑)。 野球でたとえると、メジャーリーグの壁にぶつかったという感じですね。中國の公園は健康運動のメジャーリーグ。私はそれを確信しています。 ――健康づくりの視點から見ると、中國の公園で受けた一番のヒントは? 健康は體、心、頭の三軸構造ので立方體で支えられていると私はイメージしています。普通はどちらかというと、體(ボディー)に偏る方が多いようですが、やはり心の健康こそ大事です。そういった中で、北京の方たちは皆で集まっておしゃべりしながらコミュニケーションをはかり、ダンスや雑技のような運動など色々な技術を覚えながら、心の安定と頭のトレーニングにもつなげていることはとても素晴らしいと思います。その3軸構造を伸ばす活動が健康づくりには大切なのだということを肌で學んだことが、私にとって北京で學んだ一番の成果だと思います。
ヘルスロードで世界とつなげたい ――數多くある中國の面白健康法の中から、今回のご本では7種類を中心に紹介しており、中には、オリジナルソングまで作って、田邊さん獨自の創意工夫も生かした體操もあるようですね。 そうですね。私が中國の面白健康法の中で、最初に普及したいのは、「ツボタタキ」體操というものです。振り付けにあわせて、楽しく運動できるために、歌まで作りました。歌詞は中國風水も考え合わせながら「運をよぼう」ということで、「ハッピー?ラッキー ツボタタキ」という題にしました。 道具を使わずに、手を叩くだけで出來る體操です。一番気に入ったところは、座ったままできることです。お年寄りの方もできるし、普通に體が動けない方でも手で拍手することで手のツボを刺激し、健康に役立てようとするもので、とても魅力があります。 この「ツボタタキ」體操の源流の體操は「経絡拍打體操」と言うもので、一通りやるには1時間以上もかかりますが、それをぜひ日本の皆さんにも楽しんでもらいたくて、やりやすくするよう5分ほどのダイジェスト版にアレンジしました。 この體操が日本でも楽しまれている情報が中國にも伝わってほしい。中國の方たちに「私たちの本場の経絡體操は日本人がこういう風にアレンジして、楽しんでいる」というのを目で見ていただきたいです。中國源流のものが色んな人が、色んな形にアレンジして世界各地に広まっていく。それはそれで楽しめて、いいんじゃないかと思っています。 ――面白健康法で結ばれた中日の絆を今後、どのように推し進めていこうとお考えですか。 中國で學んできた健康體操をわたし流にアレンジしたもの、例えば、ツボタタキとか、リボン體操(寫真右)等に、中國コマや打花棍(寫真左)というスティックを使った體操とかを加え、さらに自分が開発したバランススティックの健康體操も取り入れながら、日本人に伝える運動メニューを増やして行きたいと考えています。歴史的に見て中國がもととなって発展してきた健康運動を中心に、世界各國の楽しい運動も取り入れた健康講座をこれから日本で開いてゆきたいと思っています。 言い方を変えると、中國源流の絹や陶磁器が西方の歐州に伝わって花を咲かせた「シルクロード」からヒントを受け、中國源流の健康法を東方に伝える「ヘルスロード」を作れたらいいなと思っています。 中國の健康法というのは、気功にしても太極拳にしても、すごく深くて難解ですよね。すぐには學べない、習得できないものがたくさんあります。やはり中國人が歴史の中で培ってきたものには、私たちが簡単にはなかなか身につかない部分があるのですね。歐米の人もそうだと思います。 一方、日本人は原料を使って加工する技術が優れているから、中國が源流の健康文化、健康活動を日本で科學的に分析し、ある程度アレンジしてから、それをまた歐米に伝えるようなものに開発できるようになるのではないかと思います。そういったものを「ヘルスロード」として私が切り開いてゆけたらいいなと思っています。 【田邊潤さん プロフィール】 1957年生まれ 早稲田大學教育學部卒 筑波大學體育研究科大學院修士課程修了、専門スポーツは陸上競技 早稲田大學本莊高等學院 教諭 「チャイナネット」 2009年12月31日 |
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