イオンモール(中國)商業管理有限公司 西尾徹二総経理
北京五輪が終わった直後の2008年11月、アメリカ発の金融危機の影が世界を覆うている真っ只中、北京郊外の昌平區に、のべ床面積15萬平米、2700臺の駐車場があるショッピングモールが開業した。その名は「永旺國際ショッピングセンター」。日本の流通大手「イオンモール」(中國名:永旺夢楽城)の手がけた大型ショッピングモールだ。
永旺夢楽城の開業につれ、北京にはイオンファンたちが増え、週末や祝祭日になると、駐車スペースもなかなか見つからないほどたくさんの客でにぎわっている。
「日用品のみならず、愛犬の世話から映畫鑑賞、書店まで、私のすべてのニ ーズを満たしてくれています。それに、永旺の衣料店で買ったジャケットなら、安心して著られますし、日本料理も食べられますしね。北京にいて、日本を味わわせてくれる場所なのです」と言うホワイトカラーや、「とくに買物がない時も家族で自然に遊びに來ています。ここのキッズランドがとても楽しいから」という子連れがいる。
北京での成功を踏まえ、この9月、「イオンモール天津TEDAショッピングセンター」がオープンする予定。のべ床面積は11萬平方メートル、2500臺の駐車場がある。このほか、天津市の西青區でもイオンモールの建設工事が7月末に始まった。総投資額10億元、延床面積12萬平方メートルあまりで、2012年の営業開始を目指しているそうだ。
2017年までに日本および海外で150店舗、そのうち、中國では2015年までに10店舗の建設を目指しているイオンモール社。高度経済成長に伴い、「ショッピングモールの時代に入る」と見られている中國でのビジネス展開の様子について、永旺夢楽城(中國)商業管理有限公司の西尾徹二総経理にインタビューした。
■ 地域消費者の嗜好を最優先にする
――イオンモールの中國ビジネスの第一歩は今から14年前(1996年9月)の「上海ジャスコス」でした。しかし、わずか4年で撤退しました。當時、西尾さんも上海勤務だったそうですね。
ひとつは進出の時期が早かったんだと思います。結局上海ではうまくいかなくて撤退しましたが、中國で事業展開していく際に上海なしには考えにくいですね。そのため、イオンはまた上海に出て行かなければいけないと思います。具體的な予定はまだ決まっていません。しかし、イオンの中國戦略を考える上で、上海?華東地域はいずれ進出しなくてはならない地域であるということは、みな認識しています。
なぜ今すぐではないのかというと、まずはある特定地域で基礎を固める必要があるからです。現在は首都圏、山東省、華南でイオンのベースを固めている段階で、ある程度目途が立ったら、次の段階として華東、四川省、東北などの地域も検討されてしかるべきだと思います。また、我々はディベロッパーとしてショッピングセンターを作るわけですが、各店舗のジャスコという小売業の進出もセットで考えなくてはならないからです。
――同じ規模のショッピングモールを作る際、投資を回収するまでの過程など、中國と日本とでの違いは?
日本の場合、ショッピングモールを経営する初年度から黒字になりますが、中國ではイオンモールとしてのブランドがまだ確立されていないため、完成から収益が出るまでの期間は日本より少し長くなると思います。しかし、成長のスピードが日本と全く違います。中國では毎年大きな伸びが期待できます。スタート時には少し苦しい段階を経るかもしれませんが、成長スピードが速いため、十分な利益が見込める魅力的な市場だと思います。
――「永旺國際」の顧客ターゲットは?テナントの中における日系店舗の割合は?
一般の生活者に愛用されるショッピングモール作りを基本的な目標としています。テナントのうち、約3割ぐらいを日系が占めています。このうち、イオングループの専門店?子會社もあれば、日本國內で活躍している一般の専門店もあります。殘り7割は中國及びその他の國の店です。
――中國でモールを作る際、目指すのは日本スタイルか、それとも中國スタイルか、もしくは雙方のミックス型なのでしょうか。
やはり地域の消費者に親しんでいただくことを最優先に考えなければならないと思います。そこにどれだけ日本的な感覚を取り入れるかも考えますが、両者のミックスというより、中國の人たちに合うようにしたいですね。
――「永旺國際」をぶらぶらしますと、もったいないと感じるほど空間が広々としています。
それはショッピングモール內で非日常的な空間を作り出すためです。お客様に気持ちいいなと感じていただける空間が必要なわけです。イオンモールはただ単に買い物するだけの場所ではなく、お客様がショッピングを楽しめる環境作りがモールの基本だと考えています。そのため、ゆったりとした空間や吹き抜けによって、心のゆとりをお客様に感じていただきたいのです。