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lbxysyl.com |02. 06. 2023 |
「車線変更して追い越し」中國経済は「カーブ追い越し」から一変
陳言=文
上海の虹橋駅を出て、タクシーに乗り、市內に向かったのは午後5時だった。退勤ラッシュ前なので順調にホテルに著けると思ったが、見込み違いの渋滯に巻き込まれた。
「新エネルギー車に優先的にナンバープレートを発給するようになってから、上海の交通渋滯はひどくなったよ」とタクシーのドライバーは不満たらたらだった。今年4月下旬に開かれた上海モーターショーでは新エネルギー車︳中國では主に電気自動車(EV)︳が展示場の大半を占め、中國の來場者にとどまらず、歐米日からはるばるやってきた自動車メーカーの専門スタッフが関心を持って見ていたのは今回も新エネ車だった。上海の町を走っている乗用車の多くも、新エネ車だった。車が橫を走り去っても、以前とは違ってガソリン臭は感じられなかった。
中國製のガソリン車はデザイン、製造からブランド販売に至るまで歐米日製を上回っているとはいえなかったが、EVについていえば、一般市民は中國製をかなり信頼している。現在、日本製ガソリン車は中國で苦戦を強いられているが、歐米韓製が低迷し始めているのは中國の消費者や國際的な自動車産業政策とかなり大きな関係がある。
中國経済でよく言われる「カーブで追い越し」とは全く違う「車線変更して追い越し」が中國自動車産業の大きな特徴になっているからかもしれない。
今年の上海モーターショーは大いに盛り上がり、中國産新エネ車の展示に大勢の來場者が押し寄せた(vcg)
國際社會でもEVが大勢に
今年4月上旬のニューヨークモーターショーや同月下旬の上海モーターショーでもEVがメインの位置を占め、メディアもガソリン車にはレンズを向けなかった。
日本は昨年1年間に5萬臺のEVを販売したが、これは全販売臺數の1?7%にすぎず、自動車生産?輸出大國とは思えない數字だった。日本のメディアを見ると、EVに対して懐疑心を抱いている人が多く、日本はハイブリッド車で実力を発揮できると思っており、極端な場合は巨大資本が乗用車の燃料電池車の研究?開発(R&D)に投じられると考えている。今年に入って合成燃料に対する新たな期待が生まれているのに伴って、日本ではますます純EV熱が冷めているようだ。
世の中、絶対と斷言できないことは多い。EVも確かに多くの問題を抱えており、自動車産業全體の希望をEVに託すわけにもいかない。さまざまな技術競爭が展開され、技術的?製品的に少數派だとしても、継続していくことが自動車産業自體には良いことなのかもしれない。
筆者は車を運転して取材先を訪ねることが多いが、現在、中國各地どこへ行くにしてもガソリンのことを心配しないでも良くなったが、數年前までは少し郊外に行く場合、ガソリンスタンドが全く見つからないこともあり、不測の事態に備えてあらかじめ満タンにしておかなければならなかった。現在、中國のどんな田舎に行っても電気がない村はなく、充電設備さえあれば、EVで中國中を走り回ることができる。これが水素ステーションや、合成燃料ビジネスが將來的に成功したとしても、電力とは比べられない理由だ。こうしたことから筆者は自動車の電動化は大きな潮流に違いないと思う。
昨年の販売臺數を見ると、市場全體が下落する中、純EVはプラスの伸びを実現し、全販売臺數の5分の1がEVだった。EVの製造コストがガソリン車よりも高いことは覚えておくべきだ。それにしても政策的な誘導や消費者の好みを考えると、純EVがガソリン車を追い越すのは単に時間の問題だ。
國際エネルギー機関(IEA)は今年のEV販売臺數を昨年比35%増の1400萬臺と予測している。EVが大勢となるのはすでに火を見るよりも明らかだ。
中國EV市場は激しい競爭
中國の自動車産業振興政策が実施されてすでに數十年たつが、他の産業とは違い、鉄鋼、家電、鉱山、機械などが國際市場にかなり大きな影響を與えているのに対し、中國の自動車産業がその栄に浴することはない。共同出資から離脫し、中國の自動車産業が獨立して発展するのは容易ではない。
自動車は特殊な消費財であり、消費者は安全性、快適さ、美しさ、ブランドなどに複雑な要求を持っている。管理方式などが相対的に保守的な國有企業がタイムリーかつ正確に消費者の需要に応えられるのか否か、この問題の対応はかなり困難 だ。
中國の民営企業もガソリン車の分野で海外の大企業と競爭するのは困難だが、その主な理由は資本力、技術蓄積、ブランドに関する評価などが関係している。
中國企業が進めるのは車線変更をして追い越す道しかない。歐米日の自動車企業を上回ろうと考えれば、全ての新商品に、命懸けの態勢で、犠牲を惜しまず前進する努力を重ねなければならない。中國のEV市場の競爭は激しく、チャンスや資本、技術面において全て優勢な米國のテスラ以外で、他國の企業が中國のEVと競爭するのは困難だ。比亜迪(BYD)などの中國EV企業は電池、電機、半導體などの電子制御設備を全て自社で內部調達できるが、トヨタ、フォルクスワーゲンは今のところこのレベルに達しておらず、今後BYDを追い抜こうとした場合、多くの困難に直面すると筆者は考える。
車線変更しての追い越しは、中國のEVにとって、人工知能(AI)、情報技術(IT)プラットフォーム、第5世代移動通信システム(5G)などの通信技術や太陽光発電、風力発電などの新エネで起きていることと同様である。中國におけるEVの普及を特殊な現象と見なすのは不本意であり、それはさまざまな「車線変更しての追い越し」において目にしやすい現象の一つにすぎないのだ。
しかし車線変更しての追い越しが全て順風満帆というわけでもない。例えば、バイオ醫薬品などは世界水準を大きく下回っている。しかし、昔ながらの中國観で、中國がカーブで追い越そうとしていると見たり、切り離し(デカップリング)あるいは経済安保によって中國の首を絞められると考えたりするのは、問題を単純化し過ぎていると思う。
中日経済は競爭?協力時代
中國の40年余りに及ぶ改革開放は中日経済協力がメインラインだったが、ここ2年、日本側が経済安保を強調したことによって競爭と協力が同時に存在し、ハイテク関連の交流はこの政策の影響を受けており、推進は困難になり始めている。
しかし、経済安保をどれだけ強調しても、技術開発の道が異なっても、製品と市場ターゲットは従來通りであり、経済的な協力が人為的な障害を乗り越えるという意味では、道は違っても行き著くところは同じだ。
再びEVに焦點を合わせてみよう。日本の電池技術、自動運転技術、自動車生産能力などは依然として先進的であり、R&D能力に明確な停滯が出現したわけではなく、ガソリン車の分野から外に踏み出そうとしていないだけである。前進すれば、協力を求める中國企業の熱い視線があり、熱気のこもった中國市場がある。企業がどのように臨機応変に行動するのかが注目だ。
「人民中國」より2023年6月2日