アジア太平洋情勢は長期的な焦點だ。最近の中日、中米、日米、中日米、朝韓など2國間、多國間関係の敏感さと複雑さによって、アジア太平洋情勢は一層デリケートなものへと向かっている。現在のアジア太平洋情勢をどう見るか。(文:任衛東?中國現代國際関係研究院研究員。人民日報海外版コラム「望海樓」掲載)
アジア太平洋はすでに世界の地政學上の重心となっている。
近代以降、世界の地政學上の重心は一貫して歐州、そして後の歐米だった。第1次大戦と第2次大戦により形成された基本的な世界の構造は主として、大國が歐州で形成した戦略構造によって決められたものだ。冷戦を通じて米國は世界的覇権を爭っていた唯一の対戦相手であるソ連を崩壊させただけでなく、歐州を確たるコントロール下におさめた。冷戦終結後の最初の10年間である1990年代、米國は依然歐州を戦略の重點としていた。続く10年間である2000年代、米國は特に中東に戦略の重點を置いた。
2010年代に入ると米國は世界戦略の重點をアジア太平洋にシフトし始めた。中國を世界覇権の主要対戦相手と明確に位置づけたことがその背景にある。これは米國の覇権のロジックに完全に符合する。中國はソ連崩壊後、全ての分野で米國と競爭関係を築くことのできる唯一の國なのだ。
當然、アジア太平洋の利害得失は中米両國のみならず、多くの國々の発展の展望と國際的地位にも重要な影響を與える。アジア太平洋構造の全面的な展開が進むに伴い、世界の地政學上の重心は一段と明確に歐米からアジア太平洋へとシフトする。
米國にとってアジア太平洋は中國抑圧の地政學上の主戦場だ。米國は現在、全力でアジア太平洋に新たな冷戦の地政學構造をつくろうとしている。米國のこの努力には舊來の軍事同盟の一層の強化の他に、新たな特徴も呈している。第1に中國を念頭に置いた統一戦線を最大限築くこと。ベトナムとの経済関係、政治関係、そして特に軍事関係の全面的な強化、ミャンマーとの関係の全面的な改善、長期間冷え込んでいたラオスとの関係打開などだ。第2に米國を中心とする蜘蛛の巣狀の戦略構造の構築。第3に前線配備の強化と共に戦略の縦方向の深化。日本の軍事力発展の後押し、沿海域戦闘艦のシンガポール配備、フィリピン?スービック海軍基地の再開、東アジアでの前線配備の強化などだ。第4に経済的切り離し。米國は中國を排除した環太平洋戦略的経済連攜協定(TPP)を大々的に売り込んでいる。