この度、米議會下院が「2011年通貨為替監督改革法案」を提案した理由は、米中貿易の不均衡や米國の高失業率の主な原因が、中國が人民元の相場を操作し、自國通貨の価値を人為的に抑えていることにある、とされている。だが、これはまったくナンセンスである。周知の通り、米國と中國は、投資や貿易構造、貯蓄率や消費支出、経済のグローバル化に伴う分業化においていずれも大きな隔たりがある。これらすべてが米中間の貿易不均衡の主たる原因なのである。
また、米國の高失業率を人民元の安さのせいにするなどもっての外である。通貨改革以降、人民元は約30%切り上げられているにも関わらず、同時期における米國の失業率は7%から9%以上に上昇している。米國の高失業率は確かに危機の一因であるが、それよりも、行き過ぎた自由主義が蔓延したことによる投機経済や人的資本の喪失、また技術進化、社會変化による就業構造の問題の方がより根深い原因になっているはずである。根本的な問題を解決しようとせずに、國外にその矛先を向けるだけでは、失業問題はより深刻化するだけである。