渋谷 俊彥(しぶや としひこ)
中日(日中)両國は、互いに引っ越しのできない隣國であり、漢字等共通の文化を有する古い友人であり、世界第二位?第三位の経済大國でもある。したがって、両國の友好を促進することは、両國の國益に資することはもちろんのこと、世界全體の平和と安寧、安定的かつ持続的な成長?発展にとって必要不可欠である。
そんな両國だが、常に安定した関係を保ち続けてきたかといえば必ずしもそうではない。國家指導者同士の意思疎通が満足にはかれない時期もあり、その根底には、理屈や道理だけでは説明できない感情的な行き違いや誤解があることも否定できないだろう。しかしながら、前述の通り、両國は切っても切れない関係であり、両國には互いの友好関係を促進すべく行動を起こす責務がある。
國と國との関係も、紐解けば個人間の付き合いの積み重ねである。しかし、年齢を重ね、一定の立場?役職についてしまうと、表立って口に出せないことや、様々な規則やルールで動きが取りにくいこともある。そういった世間のしがらみの少ない若い世代青年世代が、率直に語り合う関係を構築する仕掛け?體制づくりを進めることで、生涯にわたる友好関係が築けるはずだ。青年時代に培った人間関係が、將來、彼らが一定の立場?責任のある役職についた時、必ず役に立つ。國や言葉は違えど、同じ世代に生きたアジア人同士である。彼らが胸襟を開いて交流する機會を創出すれば、活きた人間関係、本音で語り合える友情が育まれるはずである。
そこで、青年世代が第三國で切磋琢磨し合う留學制度の創出を提案したい。例えば、米國や歐州といった非アジア圏で、両國から選抜された青年世代が一定期間、同じカリキュラムを學ぶ。世界トップレベルの大學院といった困難なプログラムで、両國の青年がペアやチームを組み、同じ宿舎に寢泊まりし、両國の參加者が共同で定期的に報告を行うようにする。親戚や舊知の友人はおらず、母國語が通じない環境で、ゼロから人間関係を構築しなければならない。アジア人に対する偏見や誤解を感じる場合もあるかもしれない。それまでの人生で経験したことのない場で、両國の將來を擔う若者同士が、互いに支え合い、勵まし合う。日々のストレスから、感情的なやり取りや諍いがおこる時もあるだろう。しかし、表面的な付き合いでやり過ごせる安易な環境ではなく、本音のやり取りなくして乗り切れないほど厳しい機會とすることで、大きな効果が期待できる。
私は、二年間、英國の二つの大學院に留學した経験がある。私が留學を通じて得た最大の財産は、學問的な知識や英語力ではなく、生涯を通じた友情を約した中國人仲間である。留學當時は、尖閣諸島(中國名:釣魚島)を日本が國有化した時期と重なり、両國の関係が悪化した時期でもあった。二つのプログラムを通じて、私は複數の若き中國人留學生と知り合うことができた。私の通う大學院では、膨大な宿題と難易度の高い試験により、學位を取得できず失意のまま帰國する者も少なくなかった。そのような中、日夜、中國人の仲間達と勉強に勵んだ。英語が母國語のクラスメートでも四苦八苦する中、我々が悟していくには、睡眠時間を削っての猛勉強と宿題を分擔し合う協力體制が欠かせなかった。落第の怖れと極度の疲労?ストレスにより、中國人仲間と言い爭いになったこともあった。笑顔を振りまき、綺麗ごとを言っているだけでは乗り切れない毎日であった。しかし、プログラムを無事に乗り切ったとき、自然に涙し、抱き合いながら、互いをきょうだいとし、生涯の友情を約すことができた。彼らの內、一人でも欠けていれば、私はプログラムを修了できなかったはずである。大きな感動と喜びを分かち合った瞬間を、つい昨日のことのように思い出す。今でも、彼らとの交流は続き、互いの家を訪問し合い、家族ぐるみの付き合いに発展している。
両國では、様々な団體が互いに訪問し合う交流を行っている。しかし、どれも中國もしくは日本を舞臺にした集団での交流であり、個人の人間性?エゴを露出しなくても無難に交流できる機會となっている可能性がある。つまり、サッカーに例えれば、どちらかのホームグラウンドで開催される親善試合に過ぎず、ホスト側は熱狂的なファンのサポートを得られる環境、すなわち表面的に繕うことでやり過ごせる環境であると言えなくもない。両國には、感受性豊かで將來へ無限の可能性を秘めた若き精鋭たちが多く存在する。両國の優秀な青年世代が、心の奧底をさらけ出し、魂と魂が觸れ合う環境を通じて、真の信頼関係?友情が育まれる機會を創出する効果は計り知れない。
本稿で提案した第三國での共同留學制度に參加した青年の中から、將來の両國を擔うリーダーが輩出されることで、両國の友好関係が一層促進されることを期待するとともに、そうした機會の創出こそが両國の指導者層の重要な責務であることを強く信じる次第である。(會社役員、一級建築士)
「中國網日本語版(チャイナネット)」 2016年12月9日