中國社會科學院米國研究所研究員 陶文釗教授
現在の中米関係を語る
現在の中米関係をどのように見るかについては、以下のようにまとめることができる。
第一に、中米関係はすでに二國間関係の範囲を越えていること。今や誰もが、中米関係は21世紀の世界において非常に重要な二國間関係の一つとなっていることを認識している。中米関係の中には、ますます多くの地域や世界の経済および安全保障が含まれるようになり、これは1990年代、1980年代にはなかったことである。例えば、自然災害や気候の変化、エネルギー問題、伝染性疾病、テロ、大量破壊兵器の拡散、金融危機などといった問題の解決にはいずれも中米両國の協力が必要であり、このことは中米関係の長期安定にプラスの要素である。
第二に、中米関係はますます制度化していること。ブッシュ大統領の任期中、中米首脳の直接會談は20回、電話會談は20回、書簡のやり取りは40回におよんだ。これほど頻繁な交流はこれまでにはなかったことである。両國首脳はさまざまな場所で會談し、各地域や世界、二國間の関係について率直に意見を交わした。2008年8月、ブッシュ大領領はオリンピック開會式に參加するために訪中する前にワシントンで中國の記者の取材を受け、胡錦濤主席とは非常に打ち解け、とてもよい関係にあると語った。
第三に、中米両國は経済の分野で非常に依存し合っていること。中國がWTOに加盟した2001年以來、中國の対外貿易は急速に発展し、年平均の伸び率は28.5%に達する。これは中國および海外の経済學者が誰も予想できなかったことである。対米貿易も急速に拡大した。このため、現在の中米両國の経済面での相互依存は戦略的意義を持ち、この依存は今後も引き続き深まり、お互いが欠かせない存在となる。
第四に、米國の対臺灣政策がある程度変化したこと。2003年12月に溫家寶総理が訪米した際、ブッシュ大統領はホワイトハウスで溫総理と共同記者會見を開いた。その席上、米國の対臺灣政策について觸れ、米國は臺灣海峽の現狀を一方的に変えることに反対すると言明した。また、臺灣の指導者の言行は現狀を一方的に変える可能性があることを示しており、米國はこれに反対すると述べた。これは、ブッシュ大統領が中國の総理の前で、臺灣當局が現狀を一方的に変えようとしていることをきわめて率直に批判したものである。
第五に、中米両國の民間交流が絶えず拡大していること。中米國交正常化以來、両國の民間外交は発展し続けている。米國との民間交流は、ビジネス、貿易、経済、文化、教育、スポーツ、人材、観光など各レベル、各方面において、他のいかなる國との交流よりも圧倒的に多いといえる。このような民間交流は両國の政治関係が悪化した時も途切れることなく、しかも両國政府が困難な局面から抜け出るのを手助けした。中米の今後の交流は、実質的には中米関係から中米2つの社會の間の関係に変わるのではないかと考える。両國の間の、2つの社會の間のきずなはますます固くなることだろう。
もちろん、中米両國の関係はすべてがよいとはいえない。見渡す限りの晴れた空にも、いささかの相違點は存在する。しかも短時間では解決できない相違點もある。それは次の3點である。
第一に、中國と米國は社會制度やイデオロギーが異なる國であること。このため、人権問題、チベット問題、宗教信仰などの問題において、米國は時おり中國を批判する。
第二に、臺灣問題。米國にはまだ『臺灣関係法』があるため、今年も臺灣に武器を販売した。このことは當面の狀況から言うと、中米関係、とりわけ中米両軍の関係に影響を與えている。長期的に言うと、米國が表示している政策は「臺灣問題は平和的に解決しなければならない」と述べているに過ぎない。しかし私たちの見解は「臺灣との平和的統一」であり、「平和的解決」と「平和的統一」の「平和的」の一點は同じであるものの、私たちは「統一」を求め、彼らは「解決」を求めている。いったいどのように「解決」するのかを彼らは口に出さないが、米國では多くの人がさまざまな意見を表明している。そこで私たちも、米國は臺灣を使って中國を制するのではないか、中國との関係において臺灣というカードを切ってくるのではないかという疑いを拭い去ることができない。
第三に、中國は急速に発展している大國であり、米國は唯一の超大國であること。このため、米國は中國の発展が米國のアジア太平洋地域および國際的地位を脅かすのではないかといつも心配し、中國を用心しなければならない、中國をけん制しなければならないと主張する聲がある。
「チャイナネット」2009年1月5日