■國內の幾重もの障害
野田首相がTPP交渉の問題で、率先して參加意志を表明しておきながら、具體的問題では言葉を濁し、文書では細かな字句にこだわり、「敏感な項目への配慮」を要求するのには、背景がある。
戦後日本は貿易自由化の旗印を高くかかげ、世界中に自動車や電器製品を輸出してきたが、外國製品、特に農産物の輸入に対しては入念に計算し、有形無形の障壁を高く築く鎖國政策を取ってきた。左派、中道、右派を問わず「一粒たりとも外國米の輸入を認めない」法案を可決したことがあるのは、その好例だ。1993年に初めて外國米の輸入を余儀なくされた時には、國産米の買いだめに走る「米騒動」が勃発した。「日本米品種優越論」だの「外國米有害論」だの反対理由は非常に多く挙げられているが、はっきり言えば、ただ1點に盡きる。戦爭中に制定され、今日まで踏襲されている「食糧管理制度」を維持し、大いに保護?優遇されている農民の歓心を買うことで、農村の「保守票」を確保するためだ。日本とASEAN各國(都市國家シンガポールを除く)が貿易自由化の過程で幾重もの困難にぶつかる大きな原因もここにある。
まさにこのために、今回の野田首相によるTPP交渉參加の慌ただしい決定は、自民黨の強烈な反対だけでなく、黨內各方面からも強い非難を受けたのである。「生活第一」の旗印をかかげ、有権者の心を捉えることに長けた小沢氏が野田首相に対して安心できないのは、こうした行動によって大量の農村票を失うことを懸念しているからだ。
■中國に対しては利益を最優先