(3)対先進國投資の障害
中國の対外直接投資(FDI)は急速に発展しているが、これはリスクがないということを意味するわけではない。実際、商業上のリスクであれ、政治的なリスクであれ、海外市場でのリスクは國內市場でのリスクを上回るのが一般的だ。さまざまな國境を越えた経営スタイルの中にあって、直接投資が直面するリスクは単純な輸出入貿易よりも多いといえる。
中國の投資は全體として、発展途上にある投資先國でより熱烈に歓迎される一方で、発展した投資先國ではしばしば保護主義や政治的な邪推による制限を受けているといえる。発展途上國をはるかに上回る市場規模を擁する先進國が、これまでに導入した中國のFDIで発展途上國を明らかに下回るのは、こうした保護主義や政治的な邪推が重要な原因だ。
こうしたことを背景として、2010年の歐州経済危機の際、米國誌「フォーリン?ポリシー」スペイン語版の編集長らは、「ニューヨーロッパ」誌に「中國に歐州を救わせる」と題する文章を発表。中國からの投資に対する歐州の保守的な考え方ややり方を批判し、「がたがたになった歐州経済を中國に救わせよう。外國からの投資はこれまでずっと経済の回復や成長を支える有効な方法だった。不幸なことに、歐州の大部分の人は危機への反応で反対の方向へと進んでいる。さまざまな新規定は外國資本の流動にマイナスだ」と述べた。
投資受け入れ國の多くが、中國の投資市場への參入をめぐり厳格な要求をうち出していることには、おのずから必然性がある。全體としていえることは、中國は國際直接投資市場では新參者であり、個人、機関、政府を問わず、新たにゲームに參加する競技者に、適応や習慣化のプロセスを踏むよう求めるのはごく自然な感情だということだ。中國側は十分な忍耐力と時間を注いで、ますます増える投資受け入れ國や利害関係者が中國の投資の発展に適応し、慣れるようにしなければならない。
問題は、一部の先進國で保護主義の傾向が非常に強いことだ。かつての歐州共同體(EC)から現在の歐州連合(EU)まで、國際貿易の世界では「歐州の要塞」ということがずっと言われているだけでなく、最近はさらに蔓延して、勢いよく発展する中國の海外投資を一層疎外するようになっている。こうしたことは、中國の「黒字還元」や歐州の中國チャンスの分かち合いにとって、いずれも利益にならないことだ。歐州の人々は中國の対歐州貿易が黒字であるといっていつも攻撃しながら、なぜ中國による黒字の還元をあれこれ口実を設けて斷ろうとするのだろうか。
さらに悪いことは、これまでの覇権を保とうとして、西側諸國のかなり多くの勢力が、勃興する中國を新興の手強い挑戦者とみなしていることで、これが事態をとりわけ複雑なものにしている。米國においてこの傾向が最も顕著だ。90年代初めにブッシュ政権が「業種規制あるいは國家安全保障にかかわる規制」(エクソン?フロリオ條項)を引き、大統領が直接関わって中國航空技術進出口総公司によるシアトル企業の買収を阻止したケースから、華為公司が08年に米國のベインキャピタルと共同で3Comを買収しようとして果たせなかったケース、10年にモトローラの移動通信ネットワーク業務を買収しようとして失敗したケース、11年に米國の3リーフ社の一部資産の買収から手を引かざるをえなかったケースまで、中國製造業企業による米國の資本集約型?技術集約型産業への直接投資プロジェクトは、米國側に「國の安全を守るため」という理由で相次ぎ阻止されている。
経済開放を通じて飛躍的な発展を遂げた中國は、他國と発展の成果を分け合いたいと望んでいる。00年以來、中國の輸入の伸びが世界の輸入の伸びの2倍に達すること、FDIが急激に増加していること、対外支援も発展していることは、いずれも中國の姿勢を明らかにするものだ。他國が中國チャンスを分かち合いたいと望むなら、企業から政府まで一定の努力をし、相応の調整を行うべきだ。
われわれは、中國の投資に対するより厳格な安全審査を中國の発展成果に対する一種の承認とみなすことができる。われわれは発展の代償を引き受けなければならず、これは大國が発展する過程で避けて通ることのできない段階だ。とはいえ、中國からの投資を受け入れる先進國は、どのようにすれば自國の持続可能な発展の利益に合致するかをわかっていなくてはならない。われわれの貿易パートナーが包容力ある心によって國の利益を増進させることができるよう願っている。
「人民網日本語版」2011年6月1日