■曖昧な日本 ストレートな中國
――この3ヶ月、中國の會社を相手にビジネスを展開してきたようですが、日本國內の営業活動と比べて感想はどうですか。
たいへん面白いことに、良くも悪くも日本企業よりは判斷が速い。それから、経営者は若い人が中心です。ですから色々いい訳をしたり、くどくどしく話をしたりはしない。もちろん、企業が大きいと、トップの決斷だけでは話が決まらず、下の部門の合意も得る必要がありますが、でも、人と會う時は曖昧な言い方をしない。問題點をはっきりさせて、その問題が解決できるかどうかをちゃんと言ってくれます。その點、日本よりはストレートなので、ストレスが少ない。ダメなものはすぐダメだと分かります。その點、日本は全體的に曖昧で、その時にダメなのか、將來がダメなのか分かりません。
――ということは、中國と日本とで、ビジネスのやり方が違うということを心がけているのですね。
そうですね。お客様も違いますし、営業マンの個性も違っています。日本の営業マンはまじめで安心できる人が多いですが、自らでものを考えて、お客様を開拓して、お客様の中に入り込んでいく人もいますが、數として少ないです。
中國の場合は日本の社員のようにまじめに朝、出勤して、夕方に會社に戻って、殘業して帰る人は少ないです。出社時間に遅れてきたり、営業があると言ってまだ4時なのに帰宅してしまう人もいます。そういうのを分かっていながら、それでよいと思っています。
というのは、4時に最後の営業が終わって、1時間かけて會社に帰ってきて、何もしないで、適當にレポートを書いて、また1時間かけて帰るというのでは、3時間もかかってしまいます。この間、何も生まれてこない。社員が疲れるだけです。そうならば、むしろ、速く帰ったほうがよいです。
営業が終ってついでに會社寄ればいいけど、寄れないなら、無理して會社に戻ってきて、頑張っているポーズをとらなくても良いと思っています。
――言い換えれば、柔軟に管理しているということですね。
社員は時間によって効果が出るのではなく、実際の行動で成果が生まれてくるから。お客様にとって、何も利益が生まれてこないことなら、やらなくて良いと思います。
日本にいる時は、社長の私が社員に「早く帰ってください」と言っても皆、帰りません。會社に戻って報告するのと、殘業するのがなんとなく文化になっています。
■日中は相互補完で強くなれ
――ソフトブレーン社の主力製品である営業サポートソフトウェア「eセールスマネージャ」を導入したクライアントから、「中國流営業に、営業プロセスを分析する日本流をプラスした組織作り」に役立っていると評価されたようですが、ビジネス展開の視點から、日本と中國の強みと弱みはそれぞれどこにあると見ていますか。
経営の視點から見ますと、日本の強みは継続性です。何十年間もずっと研究開発を重ね、人材流動性が低いお陰で、良い人材をじっくり育てられる。しかし、一方、それが裏目に出ていることもあります。
ずっと継続しているということはつまり、悪いことがあってもなかなかやめられない。革新する力が弱い。人材もじっくり育成されてきて、長く染まってきたため、転用が難しい。マーケットは急に変わるものなので、その人材の価値があっという間になくなる場合があります。たとえば、活字をつくる技術者が昔、日本にたくさんいましたが、コンピューターの時代になると、一瞬にして職人系の活字技術者はいらなくなりました。同じように、ビジネスの習慣も今の時代では古くなったものでも、過去は良かったという習慣で、長く続いていたせいで、なかなか変えるのが難しい。
一方、中國の企業はまだ歴史が淺いため、前向きで過去にこだわらないところが強みですが、手っ取り早く儲けることに興味があって、長期投資しない、人材育成もしないという短所があります。だから、ブランド形成しにくいし、製品も付加価値の低いものに集中してしまいます。目先のことでせい一杯で、蓄積できず、なかなか、産業の高度化ができない會社が多いです。
――中日雙方にそれぞれ弱み、強みがありますが、雙方がうまく融合できるといいですね。
日中の文化の違いはなかなか乗り越えられませんが、企業においては、たとえば、日産と中國東風の合弁などは見事にやっている例だと思います。販売とマーケティングは中國の責任者が擔當し、職人技の必要な製造は日本が擔當する。日中の協力は難しいけれど、うまくやれれば非常に強くなって、成功すると思います。協力によって長所を引き出し、短所を抑えることができると思います。