こうした言動は、心を通わせ、徳によって人の和を図る溫総理の外交スタイルが現れている。「心を通わせる」とは、おざなりにせず偽らず、誠意を持って向き合うこと。では「徳」とは何か。中國の古典「管子」によると、「民を愛し私無きを徳という」「民を利し得せず、天下これと親しむを徳という」。「衆を悅ばすは愛施に在り、衆を斉(ととの)うるは私を廃するに在り。遠くを招くは近くを修めるに在り、禍(わざわい)を避けるは怨みを除くに在り」。隣國が自然災害に見舞われたいま、被災した人々に援助の手を差し伸べることこそ、大きな徳ではないだろうか。
溫総理は両國の民間友好の促進について、小さなことから少しずつ始める必要性をとりわけ強調した。少し前に、北京に駐在する日本人記者からこんな話を聞いた。「妻はもともと中國に好感が持てなかったが、北京の親切なタクシー運転手と出會ってからイメージが一変した」という。ここから、民間交流はこうしたささいな出來事に潛む調和と友愛が必要であることがうかがえる。
話を元に戻すと、両國間の歴史問題、臺灣問題、領土問題、民族感情などの要素が絡み合って生まれた構造的な矛盾も見過ごすことはできない。こうした問題は両國それぞれの価値観や國家利益にかかわるものであり、徳だけに頼るのでは恐らく解決は難しい。それゆえに、中日両國は戦略的互恵関係を構築する必要がある。今後の鍵は、上述の矛盾を解決する中で、戦略互恵関係をいかに具體化し、また協力を拡大する中で、それをいかに充実化するかだ。両國関係が困難や壁にぶつかるほど、長期的な視野、民間の友好を重んじる視野、両國の根本的利益に基づく視野に立ち、戦略的?全局的な高みから、戦略的互恵関係の持続可能な発展を推し進めることが求められる。(筆者 人民日報特約コラムニスト、清華大學現代國際関係研究院教授、副院長)
「人民網日本語版」2011年5月26日