身近な例を挙げてみよう。ある日、新宿にあるドーナツ店に入った。隣のテーブルには若いカップルが座っていた。彼らがオーダーしたのは、一番安い1個160円のドーナツ2個だったのはいいとして、その320円をきちんと割り勘していたことに、吃驚してしまった。
カップルの男の方が彼女に「もう100社ほど面接に行ったけど、どこも採用してくれない。このままじゃ、2人で住むところを探すのも大変だし、將來も不安だから、結婚はもう少し後にしたい」などと言っている。
女の方は黙って頷くだけだった。自分の若かりし頃、日本はバブル経済の真っただ中で、誰もが希望に満ちた將來を描いていた。だが今は、こんな若い世代でさえ、將來の展望が持てない國になり下がっている。萎れ切っている隣のカップルに、中國の人気ドラマ「裸婚時代(「裸婚」とは家なし、車なし、金なしのため、式も挙げずに結婚すること)」の決め臺詞を言って慰めてやりたくなった。
自信喪失した國の様子は、夜の街でも同様に現れている。西麻布は、北京でいうと三里屯のようなところで、深夜まで営業(yè)しているクラブやバーが立ち並び、大人の遊びスポットである。だが、ここも不景気のあおりを受け、昔よく通った店のほとんどが休業(yè)中になっていた。贔屓のワインバーが1軒だけ、かろうじて営業(yè)を続けていた。そのワインバーにしても、我々以外の客は、若いサラリーマン4人だけであった。