石田護(伊藤忠商事理事、吉林大學中日経済研究中心研究員)
第11回G20サミットが4日、杭州國際博覧センターで行なわれ、習近平國家主席が開幕の辭を述べた際、「杭州サミットが世界経済のために個別対策と抜本的対策を兼ね備えた、総合施策の処方箋を出し、世界経済が力強く、持続可能で、均衡ある、包摂的な成長の道を歩み出すようにすることを希望する」と指摘した。
G20は21世紀の世界経済運営に不可欠な枠組みである。G20がなければ、先進諸國は1930年代のように過激な為替切り下げ競爭に走るかも知れない。G20に限界はあるものの、G20が経済政策の行動基準に合意することの意味は大きい。G20諸國が協調して世界経済の発展のために行動するよう、経済大國中國の指導力発揮が期待されるのは自然な成り行きである。
金融市場の安定について、G20財務大臣?中央銀行総裁は去る7月の成都會議共同聲明で、為替レートの過度の変動や無秩序な動きが経済と金融の安定に悪影響を與えること、通貨の競爭的な切り下げを回避すること、競爭力のために為替レートを目標とはしないことを含む従來の為替相場のコミットメントを再確認することを表明した。
現実の世界では、G20の高邁な合意とは裏腹に、各國は自國に有利な為替レートの確保に走る。2012年、安倍晉三次期総理は、日本は他國の通貨切下げに対し量的緩和によって円高を是正すると語った。翌年3月、日本銀行が量的質的緩和に踏み切ると円は急落した。2015年1月、歐州中央銀行が量的緩和を決定するとユーロも下落に転じた。米?日?歐の量的緩和が供給する大量の資本が國境を超えて移動し、為替レート変動の振幅を拡大している。資本はアジア諸國にも流入?流出し、経済の安定を脅かす。
量的緩和政策には所期の物価上昇?経済活性化効果は見られなかった上、それが引起す資本移動が為替変動を拡大した。為替レートのオーバーシュート、アンダーシュートは新たな対外不均衡の原因となる。國際通貨情勢の安定化には、金融政策の協調によって過度の資本移動を抑制する必要がある。しかし、先進経済が金融政策協調の議論を率先することはあるまい。私は、人民元國際化を迫られている中國がG20內の新興工業國と連帯して金融政策協調を働きかけることを提唱してきた。それによって國際通貨情勢がより穏やかなものになれば、世界経済安定成長の環境が整備されることになる。
G20の時代、経済大國中國には自國経済運営についても格別の責任がある。小國の対外的影響は限定的であるが、大國の経済運営の成否は世界の通貨情勢安定と健全な経済成長を左右する。中國は小康社會実現のため、外需主導から內需主導へ、投資主導から消費主導への経済構造転換を深刻な波亂を引起すことなく成功させなければならない。世界がその成否を注視するのは、それが一義的には中國の國內的な目標であっても、世界経済の安定と成長に大きく影響するからである。