「お父さん、コインをあげる。來年、またこのコインを湯円に入れてね。」

絵本の中のマオマオは家族寫真を撮りに行くこともない。彼女はただお父さんと一緒に5日間を過ごし、少しずつ父との思い出を刻んでいくだけだ。

余麗瓊さんは、絵本「団円」で自分の人生経験を描寫しているとはっきり言っている。これまで2年間、この絵本にもっと現実的な背景があると信じていた人は多い。

「この父親は完全に今の時代の町に出稼ぎに來ている田舎の農民“農民工”を代表している。年越しのときにだけ、家に帰り家族と団欒できる。普段は大変な苦しい生活をしている。」読者はみんなそう思っていた。

余麗瓊さんも「自然な連想だ」と理解している。彼女は、自分にはもともとその意図はなかったが、この絵本にでてくるこの故郷を離れて仕事をしている父親は確かに「ちょうど現在の中國の狀況にあっている」と認めている。

多くの人がこの絵本を読んでこの“農民工”集団の苦しさを感じている。ある広東省に住む母親は「これは私たち労働者自身の物語だ」といい、ある読者はコメントの中で「この絵本『団円』は現在の農民工が1年に1回しか家に帰れないという現実を描いている。子どもの父親に対する期待、父親が帰ってきたことを喜ぶ姿、父親が仕事に戻らなければならないときの家族との別れがたさ、すべて現在の彼らの感情を表現している。」という。

メディアで報道される外地から來ている労働者の物語だと連想する人は多い。彼らの多くは都市で自分の労働力を売りに出すことで生活し、つかの間の休息時間に攜帯電話や財布に忍ばせた子どもの寫真をみながら家族を思い出す。彼らの子どもは、ほとんどが家で留守を守り、母親や祖父母と生活している。

人力資源社會保障部の発表したデータによれば、2010年、中國の家を離れて働く労働者は1．53億人といわれている。全國婦女連合會が2008年に調査したところ、當時、全國の“留守児童”はすでに5800萬人に達していた。

「中國網日本語版（チャイナネット）」　2012年1月18日