スーダンで中國人労働者29人が反政府武裝勢力に連れ去られた事件が、大きく注目されている。同様の事件が近年増加しているのは、在外中國人?企業をとりまく安全環境の悪化を意味するとの見方も少なくない。だが実はそうではない。中國企業の被害は情勢が非常に不穏な地域に集中している。世界との交流が頻繁になり、出國者數が激増し、海外投資プロジェクトが拡大するにともない、事件?事故の絶対數も増加している。出國者數と被害回數の比率から見れば、中國人が海外で危険な目に遭う確率が改革開放前より高いはずはない。毎年延べ5000萬人以上という出國者數を考えれば、中國人が海外で安全上の事件?事故に巻き込まれる確率は依然低いのだ。(文:曲星?中國國際問題研究所所長)
では、近年海外で中國人が頻繁に危険な目に遭っていることはどう理解すればいいのだろうか。これは大型プロジェクト協力の相手國の多くが発展途上國であることが大きい。これは中國が「南南協力」を重視していることの重要な現れでもあるのだが、一部途上國は法制がまだ十分に整備されず、発展水準が高くなく、社會矛盾も先鋭化しているため、社會混亂時に中國人が巻き込まれ、被害者となることも避けられない。
今回のスーダンの場合、連れ去りが政治的動機によるものなのか、それとも経済的目的なのか、まだはっきりしない。だが事件の大きな背景として、昨年の南北スーダン分離後も、両國の経済?社會問題が依然厳しいことが挙げられる。原油埋蔵量の60%が南スーダンにあるが、製油施設とパイプラインの大部分は北スーダンにある。石油産業チェーンの分斷に、分離後の両國の発展の後れ、元々あった社會矛盾や「南北関係」複雑化の相互作用が加わり、多くの潛在的矛盾が噴出しているのだ。
長年にわたり中國企業は現地で重要なインフラ整備やエネルギー協力に従事し、スーダン社會の再建と経済、人々の生活に重要な役割を果たしてきた。一方、西側諸國はスーダンの「王朝交代」を望み、長年制裁を科してきた。內政不干渉を主張する中國の立場は多くのスーダン人の稱賛を得たが、一部政治派閥が異なる見解を持つことも避けられない。もし今回の事件に政治的背景があるとすれば、中國人を人質にすることで國內の政治問題または南北関係においてスーダン政府に譲歩を迫る、あるいは何らかの問題における立場を変更するよう中國政府に直接圧力をかける狙いがあると考えられる。中國人労働者が派遣先國の複雑な紛爭に巻き込まれる典型的なケースだ。もちろん、身代金狙いの可能性も排除できない。
だが全體的に見れば、これをもって在外中國企業?中國人をとりまく環境がおしなべて厳しいとは言えない。リスクが高い地域、情勢の不穏な地域では、事件?事故に巻き込まれる可能性は確かに高まる。したがって中國企業は対外投資の前に、リスク要素を十分に考慮すべきだ。また、こうした地域でも、中國企業?國民を狙った襲撃が他の國の企業?國民を狙った襲撃よりも多いわけではないことにも目を向けるべきだ。中國外交部と現地大使館はすでに緊急対応態勢を敷き、スーダン政府も捜索?救出に全力を上げ、中國人労働者が無事に危機を脫することを心から望んでいる。
「人民網日本語版」2012年2月1日