日本滯在中に、筆者は多くの専門家に教えを請い、さまざまな資料に目を通し、日本の中小企業と中國の中小企業とでは経営理念や管理モデルに大きな違いがあることがわかった。日本の中小企業は規模を追求しない。企業経営の理念においては、企業を年間の生産額、利益、従業員などの規模によって位置づけるのではなく、広く業界全體の産業チェーンの中に位置づける。日本の中小企業は往々にして細分化した大企業向け製品市場の中にあって、どのような製品を打ち出せるかを追求し、各社の特色や技術的優位に基づいて、あるいは関連業界における各社の社會的ネットワークを利用して、どのような製品を生産するかを決定する。そうして細分化された市場にあって、どの企業よりも優れた、どの企業の同類製品よりも特色のある、機能性の高い製品を生産することになる。各社はその専門レベルに基づいて他社を上回る製品構造、他社を上回る製品の精度、他社を上回る製品の機能を備えるようにし、自社製品が市場で獨占的な地位を占めるようにする。
中國の中小企業は発展モデルや管理の理念において、規模や市場シェアを追求する道を歩む。追い求めるのは企業の規模であり、生産額の規模であり、企業を大きくすることばかりを考える。一方、日本の中小企業は小さくなればなるほど、製品の精度が高くなる。日本の中小企業は、業界全體の産業チェーンの中で、専門化され細分化された製品の生産工場であろうと努力し、企業の規模や生産額の規模を追求して拡大再生産を繰り返すということをしない。努力目標は業界の細分化された製品市場において、替えのきかない唯一無二の「ねじ」になることで、これが中國の中小企業の発展モデルと日本の中小企業の発展モデルとにおける最大の相違點だ。
前出の従業員5人の岡野工業は、報道によれば日本のトヨタ自動車、日産自動車、マツダなどの自動車メーカーから提攜を望まれているという。これらの自動車メーカーが研究開発中の新型燃料自動車に必要な難度の高い部品の加工は、岡野工業でなければ請け負えないからだ。岡野社長は以前、日本のあるメディアに対して「私たちがやろうとしている加工は、中國企業や歐米企業には絶対にできないことだ。燃料電池自動車の実用化競爭の中で、日本は必ず先頭を走ることになる」と述べた。この発言は日本の中小企業の気迫そのものだ。
こうしたことから、日本の中小企業は卓越した生産技術によって身を起こし、企業の大きさや総合力は求めず、誰にもできないことをすることに力を注ぎ、あえて脇役に甘んじて、市場競爭の中で代替不可能な役割を擔おうとする。誰にもできないことをやろうとし、市場競爭の中で唯一無二の存在になっているために、日本の中小企業は強い生存能力を備えるようになったのだといえる。
*筆者は劉武氏
「人民網日本語版」2011年6月7日