――日本の首相としては初めて、 中國の盧溝橋に建てられた抗日戦爭記念館を訪問されましたが、非常に勇気が要ることだったと思われます。訪問までの経緯をお話ください。
村山 中國という國をどう理解すべきか、どう付き合っていくべきかを考えた時、まずは中國をよく知る必要があります。私も戦爭に巻き込まれましたが、中國に行ってはいませんので、戦時中の中國のことは知りません。自ら中國を訪問して、日中戦爭とはどういうものだったのか実際に見學する必要がありました。
――「村山談話」発表から20年が過ぎました?,F在の日本の政治と周辺國との外交において、「談話」をどう位置づけていますか。
村山 第一次安倍內閣の當時の安倍首相は「村山談話を継承する」と斷言しましたが、第二次內閣では、「村山談話をすべて継承するものではない」と言ったり、「侵略」の文言を否定したりするかのような発言を行いました。これについては國會の中でも議論があり、最終的には「村山談話を継承する」と言わざるを得ない狀況になりましたが、「村山談話」に対する疑問を提示したあとに70年談話を出すと言うのだから、歴史認識に変更を加えるのではと思われても不思議ではなく、だからこそ國際的にも今、「村山談話」が注目され、安倍談話に関心を持たれているのだと思います。
――確かに「村山談話」を否定しようという動向があるようです。これは日本をどのような方向に導くのでしょうか。
村山 日本は悲慘な戦爭の経験から平和憲法を制定し、70年間戦爭を知らず、參加することもなく、平和な繁栄の道をたどってきました。その姿勢を中國や韓國などアジア諸國はもとより、多くの國が評価しています。日本の國民にしても、右傾化にはやはり不安と危機感を持っています。憲法改正も、國民が認めるとは思えません。日本は民主主義の國で、主権は國民にあり、決定権は國民にあります。最近の世論調査も、安倍政権のやり方に反対の聲が増えています。